組織運営チップス100[石井友二]

会計監査やコンサルティング、会計事務所の運営により、過去多くの企業経営を学び、また関与してきました。我々が開発したツールやフレームワークをご紹介していきます。起業を志す方や経営者の方々の多少の参考になれば嬉しく思います。

実務経験と理論のすり合わせ

クライアントの問題点解決のため、過去様々な業種の経営支援に関与してきました。多くはマネジメントの仕組みの見直し、いわゆる組織改革がテーマでした。
 
経験を元に整理すると、組織改革を進めようとするときに、検証すべきアイテムは次のものと整理できます。
 
  1. 戦略の適切性
  2. トップマネジメントのリーダーシップ
  3. 改革ストーリーの魅力度
  4. 組織構造における改革のツールの巧拙
  5. 組織の文化風土・体制
  6. 組織構成員の意識
  7. 組織構成員のスキル

これらを改革の「7つのアイテム」と言っています。

 

これらすべてを充足しなければ、組織改革を進捗させることは困難です。とりわけ適切な戦略がとられていなければ、組織は経営資源をうまく費やすことができません。本来行うべきことができないため、従業員のモチベーションが低下し、成果が挙りません。無駄なことを合理的に行おうとしても、結局は無駄になるという事実を知ることが必要です。なので、1がまず検証され、爾後、順序よく2以降を整備していかなければ組織改革はその場限りのものとなりやすいし、仮にうまくスタートしたとしても継続することが難しいと言われています。

 

多くの組織改革を継続して成長してきた組織が、上記要素への取り組みを行なっていることは間違いがありません。完全でなくても良い、あるべき形につくりあげられるよう常に努力していくことが求められています。

 
人に、こうなりたい、こうしたいという思いがあれば、必ずそうなると私は考えていますが、組織でも、例えば各部署のリーダーがそう考え行動すれば思い通りになると確信しています。
 
まずは中間管理職、すなわち各部署のリーダーが、上記の意識をもてるよう、組織として働きかけ続けることが有益です。
 
トップマネジメントは思いを伝え続け、課題解決のための経営方針を出し、目標管理制度等により個人レベルにまでミッションを落とし込み、中間管理職を育成するとともに、彼らがモチベーションを高められる環境づくりを行わなけらばなりません。
 
そこここにあるコンフリクト(衝突)を解消し、従業員全員の創造性を高める活動を恒常化することが有効です。
 
何かを具体的に進めるときには難しいこともたくさんありますが、どのような業種においても、人が働く場面においてはここで提示した7つのアイテムが重要になることは明らかです。
 
なお、これらを展開するときには、経営管理論や組織論、リーダーシップ論、行動科学論、心理学、管理会計といった知識が求められます。
 
我々が毎日企業にお伺いしていて気付くことは、組織運営に必要な上記の考え方を受け入れる素地があるのか、ないのかにより業績が大きく異なる傾向があることです。ロジックを受け入れていない組織がいかに多いことか。
 
現場で積み上げてきた実務遂行力はとても大切ですが、ときには理論やフレームワークも知り、それを実務にどのように活かすのかを考える人たちと、自分の狭い知識や経験だけでものごとを捉え、かたくなにその正当性を主張し続ける人たちが存在します。
 
経営学は広く組織を管理・運営するための手法を研究する学問で、長い間かかって実務界で構築されてきた社会科学です。経験と実験を繰り返し、結果を理論として一定の領域に収斂させたものであり、いわばこのようなときにはこうなる、こうすればこうなるという(大げさですが)摂理があります。
 
業務を熟知し、仕事それ自体に対する高いスキルを持っていることは不可欠ですが、実務を円滑に行うためには、現場で何が行われているのかについて知悉したうえで、そこに理論を重ね合わせなければなりません。
 
実務を知り業務フローをみて、どの考え方が使えるのか、当てはまるのか、といったことを常に考えておかなければならないのです。
 
それほど複雑なことではなくても、理論から情報を得て人はどうすれば組織において心地よくいられるのか、動けるのか、何をメルクマールにして組織は機能するのか、どのような情報を提供すれば変われるのかなどが理解できていれば十分だと思います。
 
さて、マッキンゼーに「7S」というフレームワークがあります。
  1. Strategy(戦略)
  2. Structure(組織構造)
  3. System(システム)
  4. Shared value (共通の価値観)
  5. Style(経営スタイル)
  6. Staff(人材)
  7. Skill(能力)

がそれらです。

 

ここでは詳しく説明しませんが、組織があるべき方向に進み続けるために7つのSに着目し問題解決をし続ける必要があると説明します。前3つがハードの3S、そして後者がソフトの4Sといい、ハードが適切でもソフトが整備されなければうまくいかない。両者は連動すべきといっています。
 
冒頭にあげた 実務において帰納法的につくり上げた7アイテムは、ここにいう7Sの多くをカバーするコンセプトです。7Sについては後で知ったコンセプトでしたが、両者の幾つかが合致していたので納得できました。何かを進化させる活動の視点として7アイテムと7Sを併せて議論すると良いですね。
 
 
混沌とした時代を迎えたいま、各組織は経験を積み実務に精通しつつ理論やフレームワークを知り、どこに問題や課題があるのかを理解したうえで、効果的なマネジメントを行うことが大切だと改めて考えています(イノベーション