赤身マグロが教えてくれたこと
昨日、TBSのジョブチューンという超一流職人による寿司屋チェーン2社のお寿司の評価を行う番組を観ました。2社のうちの一社U社の従業員一押し1位は一皿二貫120円の人気商品、赤身のマグロのお寿司でした。
U社の担当者は、お客様にとってマグロが美味しくないと他の商品がどれだけ美味しくてもご満足いただけない。旨味のある60Kg以上に限定し瞬間冷凍したマグロを購入するとともに、通常一貫10グラムのところ、正直赤字覚悟の15グラムを使い原価率80%で提供している。さらに店舗で食塩3%程度のぬるま湯でゆっくり解凍することでドリップが出にくくなる処理を行い旨味を中に閉じ込めてもいる。
これはお客様に喜んでもらうための、寿司屋の意地とプライドで提供する商品だ、と熱く語ります。プロの心意気をみた瞬間でした。
超一流職人からの赤身マグロにある筋に対する質問には、大きなものは現地の加工時にカットし、店舗では残りのものはネギトロとして処理して食べやすく繊細な処理をしていると説明を加えました。
結果、赤身マグロを口に運んだ超一流職人からは笑顔をもらい7人全員一致で合格の高評価を得られたのでした。
さて、「マーケティングの5P」という考え方があります。
- Product(商製品サービス)
- Price(価格)
- Place(流通・店舗・エリア)
- Promotion(販促・広告・営業)
- Purplecow(紫の牛)
がそれらです(Purplecowの代わりにPeopleをあげることもあります)。
マーケティングの5Pは、マーケティングの政策を企画する際に用いられるアプローチ方法をいいます。自社の戦略を上記の5つの視点で分析し、強みやアピールポイントをマーケティング政策に活かすフレームワークの一つです。
このなかでPurplecow(紫の牛)は、「ワオと思われるユニークな存在」、「比較優位をもつもの」、「利益を生むもの」をいいます。紫の牛を育てて乳を搾るとともに、乳が出なくなる前に次の紫の牛を育てる手法を取れと説明されます。
今回のU社の赤身マグロはどうでしょうか。丁寧な商品開発を行いながらも利益はでない、寿司屋の意地とプライドで赤身マグロの提供を行っているという姿勢は地味であり、ビックリするほど目立つものではないかもしれませんが、来店客のどこかに満足を与え、U社のブランドをつくる重要なアイテムになっている可能性はあります。
もちろん、U社は当初からそこを狙い販促商品としての位置付けで赤身マグロを提供をしていると考えられなくもありませんが、来店客に喜んでもらうためにこの商品を提供する取組みを行なっているという強い想いがTV越しに伝わり感動したのは私だけではないと思います。
U社の取り組みへの感動が当然のように評価する側にも伝わったことは、全員合格の結果とともに「ドリップもなく旨味やボリュームもありとても美味しかった、500円出してもよい」という超一流職人のコメントからも汲み取れます。
「ワーすごい」、「なんだこれは」といった派手な紫の牛には見えないし、利益も出ない(いや大赤字!)けれども、Person(開発者、関わる人)やPurpose(会社の目的)の素晴らしさから、赤身マグロは知らず知らずのうちにU社への訴求力を高める商品の一つに仕上がり、来店客に高く評価されているのだと容易に想像できました。
同時にPersonやPurposeによりつくり上げられた強く顧客の気持ちをつかむ、Power grip(力強いつかみ)がそこにあるのだとも感じました。
なお、この番組は私にとっても他人事ではありません。U社の担当者の仕事ぶりに感銘を受けただけではなく、果たして自分はいま、顧客に喜んでもらえる「赤身マグロ」を常に提供できる仕事ができているのかどうかを反芻するとともに、自分はプロとして何をすればよいのかを考えたのです。
- 自分がやるべきことを明らかにする
- 意地とプライドを持つ
- 熱くなる
- 課題を次々に解決する
- 成果を挙げる
- 常に進歩し進化する
ことが必要と整理できました。
Purpose(事業の目的)やPerson(働く人)の成果としてのPower grip(力強いつかみ)を、自分のマーケティング政策の六番目のPとして加えようと深く心に留めたのは言うまでもありません。
赤身マグロが教えてくれたプロの生き方を胸に、明日からの自分づくりに取り組んでいきたいと思います。(意思決定→マーケティング)